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壁紙の向こう

中古の一軒家に引っ越して荷物の整理も終わり、二階の寝室でごろごろしていると壁紙が少しめくれているのに気がついた。 小さなものだ。どうせ、壁紙は張り替える予定だったし特に残念には思わなかったが、好奇心で少しめくってみた。真っ黒なものが出てきた...
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濡れ手で粟

何匹か盗んできた鶏から血を絞り出して、魔法陣を描く。古本屋で見つけた古くて汚い怪しげな魔導書に書かれていた儀式を始める。これで悪魔を召喚して、この生活から抜け出すのだ。 太郎は貧乏だった。 どれだけ働いても給料は上がらないし、労働環境も良い...
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盲亀の浮木

盲亀の浮木=海の底に住んでいる目の見えない亀が百年に一度、海面に出てきてそこにに浮かぶ一本の木のあいている穴に入ることは容易ではないこと。非常に稀なこと。 ……… 彼と彼女の出会いは、普通ではありえないものだった。世界を超え、時代を超えたあ...
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和して同ぜず

和して同ぜず=人と協調するが、むやみに同調しない。故事成語 ……… 裏社会では毎夜抗争が繰り広げられていた。いくつもの組織が興っては消え去り、まれに生き残ったものが歴史ある巨大組織を潰すこともあった。その中で、最後まで生き残った組織があった...
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羹に懲りて膾を吹くあつものにこりてなますをふく

羹に懲りて膾を吹くあつものにこりてなますをふく =熱い吸い物を飲んで火傷したのに懲りて、冷たいなますでも吹いて冷ますという意味の故事成語。失敗に懲りて必要以上の用心をするたとえ。 ……… 世界は勇者によって救われた。 悪逆の限りを尽くしてい...
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猫バンバン

ここは猫の精霊が住む国。今日も猫の精霊たちは、にゃおにゃおと元気に仕事に励んだり、ごろごろとのんびり過ごしている。この国には争いが無く、人間の国にあるような政府は存在しない。この国の大まかな方針は長老たちが決めているが、国民の数は少なくみん...
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可惜夜あたらよ

可惜夜あたらよ : 明けてしまうのは惜しい夜 !”#$%&’() この夜は明けてほしくないな。この夜がずっと続いてほしいと思ってしまった。 彼女は夜の間しか活動できない種族らしい。身体能力が高く、滅多なことでは死なないし病気にもならない。一...
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画竜点睛がりょうてんせい

画竜点睛がりょうてんせい : 物事を完成させるための大切な最後の仕上げ。 !”#$%&’()=~| 完成間近の、竜の像の最後のパーツが紛失してしまった。それは竜の眼球にあたるパーツで、特別な力が秘められている古代の宝石だった。製作者の家に代...
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多目的トイレ

ごく普通の街にある、ごく普通のトイレにはとても普通ではないことがよく起こっていた。 そのトイレは多目的トイレで、いろんなことに使われていた。 人が寝静まった深い夜では、全身黒づくめの怪しい男たちが何やら怪しい白い粉を取引していた。この街は海...
短編

取り出す絵本

そこからはなんでも取り出せた。描かれているものはなんでも。それに気づいたのは十二の時だった。自分の部屋の大掃除をしている時に、昔読んでいた絵本がでてきて、ふと気になってページを開いてみると中から金貨がこぼれ落ちてきたのだ。最初は金貨の形をし...
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