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画竜点睛がりょうてんせい

ショートショート

画竜点睛がりょうてんせい : 物事を完成させるための大切な最後の仕上げ。

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完成間近の、竜の像の最後のパーツが紛失してしまった。それは竜の眼球にあたるパーツで、特別な力が秘められている古代の宝石だった。製作者の家に代々伝わるもので、今回は製作者が人生の全てをかけた作品ということで、竜の眼球に用いられることになった。

一番大事なパーツだ。代わりがきかない一点ものだ。スポンサーや製作者のファンたちが大勢さがしてくれた。運んでいる途中で落としてしまったんじゃないか。誰かが間違えて持っていってしまったんじゃないか。いろんな場所を探したが見つからず、様々な憶測も出たがどれも真実ではなかった。

製作者は代わりになるものを探す旅に出た。珍しい宝石があると聞けばその産地に行き、多くの宝石を吟味した。歴史ある寺院に代々受け継がれているという宝玉があると耳にすれば、寺院に訪れ特別に見せてもらった。由緒ある博物館で古代の宝石たちを見た。どれも貴重なものであったが、あの竜の像には合わないと感じた。それでもあきらめなかった。それは製作者だけでなく、大勢のファンやスポンサーも同じだった。

無ければ作ればいい。誰かがそう言って、そうだそうしようと声が広がった。みんながお金を出し合って、この竜の眼にふさわしい素材を探した。製作者が旅の途中で見つけた一番良かった宝石が素材に決まった。それから製作者が宝石を加工してそれはできた。

製作者としては納得がいってなかった。本来使うはずだったものとは違うのだ。到底受け入れられるものではなかったはずだったが、多くの人々が協力してくれた。その想いがうれしくてこれもまた違う良さを出してくれるだろうと思った。もちろん家に代々伝わるあの古代の宝石が一番なのだが、ないものは仕方なかった。

お披露目の日が来た。大きな美術館の一番大きな部屋に設置された竜の像は、白い布が被せられていた。人々はその姿が見られるのを今か今かと待ちわびていた。偉い人が前置きにスピーチをしてから製作者がこれを完成させるまでの経緯を語った。竜は問題なく完成したが、一番大事な眼球に使うはずだった宝石が紛失してしまって今もまだ捜索中であること。代わりの眼球を作れたのはみんなの協力のおかげだったこと。色々話して、ついに白い布が取り払われた。

製作者は不安だった。やっぱりできの悪いものだと言われるんじゃないか。みんなをがっかりさせてしまうのではないかと、竜の方ではなく観客のほう見ていた。そんな不安は竜の姿があらわになって払拭された。

この日のために集まってくれた人たちは本当に感動してくれていた。誰もが竜に釘づけで息をのむ音も聞こえる。そんなに感動してくれたなら諦めずに作ったかいがあったな。製作者も満足げに竜を見た。そして目を疑った。

それはこの世の物とは思えないほど美しかった。あの竜は本当に自分が作ったものなのか。あの眼球の宝石はあんなにも綺麗ではなかったはずだ。製作者の目からは自然と涙がこぼれていた。本当に自分がこんなにも美しいものを作ったのか。疑問が沸きあがる。彼は竜の瞳にいくつもの糸を幻視した。たどっていくと、それはこのばにいるみんなに繋がっていた。そうか、これはみんなの心が一つになって完成したものなんだ。だからこんなにも美しいんだ。

あの竜の一番大事な最後のパーツは、みんなの心を一つにしたものだったんだ。

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