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幸せいちごパフェ

ショートショート

盛り上がる筋肉は、その身にまとったまとったスーツをピチピチに引き伸ばしてしていた。鍛え抜かれた筋肉は鋼のようにたくましく、その体躯は日本人とは思えないほどに大きく、纏うそのオーラは常人のものではなかった。

男は肩で風を切り、アスファルトを踏みしてしめて歩く。彼の前に障害はなく、人垣はモーセに割られた海のように左右に分かれていく。

十字路を右に曲がり、左手にあるレストランの前で立ち止まった。店の看板に書かれている店名を確かめてから、扉を開けて頭をぶつけないように少しかがんで中に入った。

レストランの中はかわいらしい花が随所に飾ってあり、椅子やテーブル、壁にかけてある絵もかわいらしかった。ウエイトレスも客も華やかな女性ばかりだった。

突如現れた男に、女性たちは震え上がった。気に入らないものはなんでも力でねじ伏せると言わんばかりの筋肉の上に、真っ黒なスーツを着た強面の男が女の園に土足で上がりんできたのだ。

その中で一人、男に向かっていく女がいた。この店で一番長く務めているウエイトレスだ。ウエイトレスは男に怯まずに、勇気だけを武器に、たった一人で立ち向かった。その姿は勇者と見まごうほどだった。

「おひとり様ですか」

男はコクリと頷く。威圧感がさらに増した。ウエイトレスはなおも怯まない。

「では、こちらへどうぞ」

男を空いている席に案内する。ウエイトレスには曲げられぬものがあった。見た目が怖いというだけで入店を拒否するなど失礼だ。何よりそんなことをしたら、自分で自分が恥ずかしくなる。今まで育ててくれた親に顔向けができないほどに。彼女の両親は情が深く、善行をよしとする良識人であり、自らの娘を見た目で判断するような人間に育てなかった。

男は案内された席に座り、メニューを見ることなくウエイトレス人差し指を立てて、見た目通りの低い声で言った。

「天使が舞い降りる幸せいちごパフェを一つ」

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